思い出のラーメン屋さん

もうずいぶん昔になります。
山手線の五反田駅の駅前に屋台のラーメン屋さんがありました。
ここは私のお気に入りで、
いつもここの屋台のラーメンを食べて帰りました。

神経質そうでほとんどしゃべらないおじさんが、神経質そうにラーメンを作っていました。
私はラーメン通でもありませんし、ラーメンに詳しくもありません。
ただ本当にここのラーメンが大好きでした。

ラーメンをひとつお願いすると、おじさんは時々首をビートたけしのように傾けながら無言で麺をゆで始めます。
どんなに混んでいて一度に注文がきても、おじさんは1玉しか麺をなべに入れません。
大きな大きななべに麺を1玉入れて、中では麺がゆったりと気持ちよさそうに泳いでいます。
ここで、ふたをしてしばらく待ちます。
その間にどんぶりにスープの用意です。
比較的長い時間麺をゆで、おもむろにおじさんはなべのふたを開けて冷たい水を少し足します。
それからまた少しまってから、浅い丸い網で大事そうに麺をかきあつめます。
長い時間をかけてゆでているように見えるので、麺がやわらかいかと思うと、これがしっかりとした腰があってすごくおいしい。
スープも透明感があってあっさりしていてとてもおいしかった。

よっぱらいが集まって一度にたくさん注文してもおじさんは1個づつ同じテンポでラーメンを作っていきます。それがなんだかおかしかったりして。
いつもこの屋台でラーメンを食べるのが楽しみでした。

3年前久しぶりに日本に帰ったとき、五反田の駅前に行ってみましたが、屋台とおじさんはいませんでした。
何度も行ってみましたが2度とあのラーメンを食べることはできませんでした。
小さな楽しみでしたがなくなってしまうととても寂しいものです。